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現場レポート
2020/05/03

移築用古民家解体工事⑦軸組み解体

長い時間をかけて8mの十字梁を外したところで、前回のレポートは終了しました。

今度は、メインの十字梁の短い方をレッカーで吊り上げていきます。

仕口が抜けていくところ。

こちらは比較的簡単に外れました。

レッカーで吊り上げてから、敷地内に降ろしていきます。

 

 

段々と材が少なくなり、屋根の構造がすっきりしてきました。

今度は柱を外していきます。まずは柱を支えている筋交いから外します。

柱は梁に比べると重量が軽いものが多く、軽めのものは手作業のみで解体し、

運んでいます。

 

ユニークな形の曲がり梁。

天井裏の見えないところまで遊び心を利かせています。

自然の木の曲線を楽しむ姿勢は、今の画一化された建築では中々見られない、

昔の職人仕事ならではの魅力です。

仕口がどうなっているか確認しています。直線的な梁と違い、

ほぞとほぞ穴の角度などが難しいようです。

まずは真ん中の束を外し、その後梁の両端を同時に外していきます。

向かって左の仕口が外れると、右の仕口もすぐに外れました。

地面に置かれていても、独特の面白みのある梁です。

 

 

こちらの曲がり梁も大変独特の形。

このような曲がり方をする木は、恐らく元々崖のようなところに

生えていたのではないかと推測されます。

こちらも吊り上げて地面に置きます。

 

かなりすっきりしてきました。

しかし後ろから見ると、まだ桁と柱が全面に残っています。

桁材は何箇所かで継いであるので、継手の部分から順番に外していきます。

外したものは一旦地面に置き、いくつかの材が繋がったままのものは

一つ一つの部材にしてから、トラックに積み込みます。

このトラックで、古材の保管場所まで何往復もして運びます。

すべての材を順番に外していき、いよいよ最後には柱と貫が一列分だけ残りました。

これを地面に倒して、一つ一つの部材に外せば、解体終了です。

他の構造材を全て取り払ってしまったため、ほぼ筋交いのみで支えられています。

レッカー紐で貫を支え、筋交いを取っても全体が倒れないようにしています。

貫の部分にロープを括り付け、大工さんが全員でロープを引っ張ります。

レッカーを緩めていくと、筋交いを外した方へ全体が傾くので、

ロープを引っ張って倒れる勢いを殺しています。

材に衝撃を与えないように、ゆっくりゆっくりと倒していきます。

全て倒れたら、繋がっている材を外していきます。

これで全ての解体が終了しました。

後は敷地内を整地するだけです。

何も無くなった光景に少し寂しさを感じますが、ここに建っていた古民家は、

新たな地で蘇ります。

次回からは、解体した古材を磨く作業に入っていきます。

 

2020/04/27

移築用古民家解体工事⑥小屋組み解体

いよいよ、木造建築の構造材を解体していきます。

梁や柱などの構造材はとても重いため、レッカーと人の力、

両方を上手に使い、解体していきます。

構造材を持ち上げるレッカー。

桁にレッカーの紐を括り付ける大工さんの様子。

レッカーで吊し上げられた古材。

吊し上げた古材は敷地内の地面に置き、2つ以上の構造材が繋がっている場合は、

仕口を壊れないように手作業で外していきます。

この古民家に使われている材は、ほぞとほぞ穴ががっちりと接合するように

数ミリ単位で調整されており、建設当時の職人の腕の良さが見て取れます。

外すのに手間がかかりましたが、掛矢(大型の木槌)やバールを使いながら、

一つ一つの材に解体していきます。

綺麗に外されたほぞの部分には、建てられた当時の番付が書かれていました。

解体に使われた掛矢。

 

大工さんがバールを使い、仕口を外している様子。

解体していくと、桁材の並びの美しさなど、木造建築の構造美が露わになり、

目を奪われます。

 

 

大きな梁を外すには、沢山の人手が必要になります。

大工さんが梁の上で、どの梁から外していくか、

仕口がどんな風に組まれているかなどを話し合い、順番に解体していきます。

レッカーで吊り上げながらの解体のため、

上に乗っている梁から順番に外していく必要があります。

メインの十字梁の上に乗っている梁の継手部分を外しています。

掛矢で叩きながら、細長い木を差し込んで「てこ」の原理を使って

力を加えていきます。

継手部分アップ。

大きな梁の上で材が継がれています。

綺麗に外れ、レッカーで運ばれていきます。

 

 

いよいよメインの十字梁に取り掛かります。

とても大きな梁のため、まずはレッカーの紐を元口部分に括り付け、

吊り上げる力を加えながら、後は手作業で仕口を外していきます。

しっかりと柱の上に乗った梁の元口の大きさ。

長い木材を使用し、てこの原理で、柱に差し込んである梁を持ち上げます。

同時に掛矢で下から上へ仕口の周りを叩き上げ、

がっちりと接合されているほぞとほぞ穴を少しずつ外していきます。

レッカーを操縦する人とそれを指示する人の意思の疎通も大切になります。

梁が抜けてくるにつれ、長いほぞが現れていく様子。

一時間近くもの間、レッカー操縦者と指示者、てこの原理で梁を持ち上げる人、

掛矢で梁を叩き上げる人など、数人の大工さんの阿吽の呼吸で作業することによって、

漸く仕口が外れました。

現れたほぞの長さに驚きます。

この古民家は長い年月の湿気を含み、仕口が膨張しており、

外すのに大変な労力が必要でした。

地面に寝かせてみると、圧巻の迫力。実に8m超えの大きな梁でした。

近くで見ると、ほぞ穴の大きさにも迫力を感じます。

この時点で、小屋組解体作業を始めてから一日半経過しています。

解体作業にかかった日数は計3日間。

残りの一日半につきましては、次回の記事でレポートしていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/04/21

移築用古民家解体工事⑤番付打ち

古民家が軸組みのみの状態になると、すべての材に番付を打っていきます。

番付とは、どの材をどこに使うかがわかるようにするために

建築図面の縦と横の列を「通り」と呼び、文字や数字で記を付けていくことです。

設計士さんと図面を見ながら、どの材にどの番付を打つかを確認している様子。

束に番付を書くためのコマ札を打っている様子。

一つ一つの材に番付を打っていきます。

普通、木造建築の番付は「いの一」「ろの二」のように、「いろは歌」と数字で記しますが、

今回は移築先がアメリカのため、「A-1」「B-2」のように、アルファベットと数字で記しています。

叉首にも番付を打ちます。

こうすることにより、全ての材を解体しても、再び組み直すことが可能になります。

この後、いよいよ軸組みの解体作業に入ります。

民家の構造を支えるメインの十字梁を外す光景は、圧巻です。

是非ご覧ください。

2020/04/02

移築用古民家解体工事④屋根の竹を降ろす

葭葺き屋根の下地となっていた垂木竹を、手作業で一本一本降ろしていきます。

この竹は、長年囲炉裏などの煙で燻されて美しい飴色になっており、煤竹と呼ばれ今日では希少な高級竹材とされています。

屋根から降ろした煤竹。

少し擦っただけで艶が出て美しさが増します。(右写真・上が擦った方)

屋中も降ろし、屋根の構造が徐々にすっきりしてきました。

竹が全て降りると、叉首や棟木が際立ちます。

簀子天井の上はこのような状態です。

簀子天井の竹も降ろしていきます。

この煤竹は垂木竹よりも直径が細く、建築資材としてのみでなく、茶筅や笛、あるいは和傘の柄などに重宝されます。

2020/03/26

移築用古民家解体工事③軸組み状態での測量調査

屋根の葭が全て降り、竹の合掌造りの構造が現れました。

竹の美しさ、構造の美しさが、青空に良く映えます。

竹による合掌造りの構造を下から見上げる。

ささら、梁、束、母屋などの構造が良く分かります。

ほぼ木材による軸組みのみになった民家の様子。

この段階で、軸組みの正確な寸法の調査が行われます。

設計士さんによる測量の様子。

今回は丸2日かけての測量調査です。

この後、移築時にどの材がどのように組んであったかをわかりやすくするため、各構造材に番付を打っていきます。

一つ一つの工程に手間や技術が必要になりますが、古民家を解体して建て直すことは、昔は当たり前のようにされていたと言います。

捨ててしまったり壊してしまったりせずに、生まれ変わらせて使い続けるというのは、日本人が大切にしてきた意識なのかもしれません。