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現場レポート
2021/01/11

明けましておめでとう御座います

怒涛の2020年もいつの間にか終わってしまい、気がつけば2021年に突入しておりました。

関西では未だ松の内ですが、関東では新年の挨拶もそろそろ時季外れのようですね。

島村葭商店の2021年の仕事は鎌倉移築用古民家の古材磨き作業から始まりました。

柱など残り数十本、長かった古材磨きもラストスパートです。

12月初旬からおよそ1ヶ月かけて漸く全ての材が磨き上がりました。

 

並行して京都に新規オープン予定の立ち飲み屋さんへ古建具や古材十数点の納品準備も進めています。

中でもこちらの桜の木の皮を網代編みにした衝立。

希少なもので大切にしていましたが、遂にお嫁に行くことに‥‥。

 

そしてボストンへの古民家移築プロジェクトも引き続き進んでおります。

移築後の図面は当初のものより一回り大きく設計されたため、増築用の追加材として当店の在庫古材を納品しました。

下屋の桁材や柱材、鴨居等々、計50本ほどが新たに使用され、仮組みも一回り大きくなりました。

今年も引き続き沢山の方と関わり合いながら日本の住文化を残し、伝えていくお仕事をしていけますよう、どうぞ島村葭商店を宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

2020/12/02

鎌倉古民家移築再生プロジェクト

本日より、鎌倉に移築予定の古民家の軸組解体が始まりました。

島村葭商店では既に取り外した鴨居や床周りなど、細かな造作材の磨きや梱包から始めています。

部材は釘が刺さっているものは抜き、磨いた後に亜麻仁油で仕上げて、艶々の綺麗な状態に。

磨いた後は、一つ一つの部材を梱包します。

梱包した材は、どこの部材かをわかるようにして倉庫に並べています。

これから軸組が解体されると、本格的に梁や柱の磨き作業が始まります。

 

 

 

2020/08/28

移築用古民家仮組み②

少し更新が滞っていましたが、前回に引き続き

古民家の仮組みレポートです。

古民家の仮組みは、どの部材がどこにあったかを忠実に再現する必要があるため

解体前の図面を何度も確認しながら進めていきます。

図面を見ながら相談する大工さん達の様子。

 

長い桁材が束に嵌っていくいく過程は、とても気持ちがよく見応えがあります。

ほぞ穴の中を掃除しながら上手く嵌る様に調整しています。

 

軒の部分の柱や桁は、細い杉材で軽いため、

床で組んでからクレーンで一気に建ち上げます。

建ち上がってからは四方に支える材がないため、

倉庫に備え付けられている板と繋いで留めます。

 

大体の柱が建ち上がると、今度は梁を乗せていきます。

梁が組まれると、木造建築の軸組が一気に見えてくるようです。

一梁一梁、クレーンで持ち上げて仕口を接合していきます。

多少曲がっている木でも、順応した構造で

自然の曲がりを活かして使用されます。

 

大体の梁が組み上がったところで上から見下ろしてみると、

この古民家の持つ曲がり梁の面白さが一層感じられます。

このような自然の曲線が多用された建築は

現代では中々見られることはないでしょうか。

13mに渡る桁材も圧巻の迫力です。

 

こちらの古民家は二重梁の構造になっており

小屋梁の上に束を立てて、更に梁を乗せます。

よりしっかりとした印象になります。

上から見下ろすとこのような感じです。

 

およそ解体時と同じ、3日半をかけて仮組みが建ち上がりました。

今度は設計士さんと御施主様が実際に仮組みの中で打ち合わせをしながら

どのように生まれ変わらせるかを相談していきます。

 

仮組みはしばらくの間建ったままになっていますので

ご見学を希望される方は下記のメールアドレスもしくは

お電話番号までご連絡ください。

info@sm-kozai.jp

090-4286-7784

 

 

 

 

 

2020/07/04

移築用古民家仮組み①

ボストンへ移築する予定の古民家は、古材磨きの過程が終わり、

仮組みの過程に入りました。

解体から建て方までを担当される工務店さんの工場内で、

一度解体した古民家の軸組みが復元されます。

 

まずは工場内で磨いた古材を梁、桁、柱などの種類に

分ていくことから始まります。

その後、番付、図面や解体時の写真を参考に組み上げていきます。

 

まずは解体の時、一番最後まで残っていた一列の柱と貫を

床で組んでから建ち上げます。

この状態では支えるものがなく、すぐに倒れてしまうため、

解体時は筋交いで支えられていましたが、今回は工場の鉄筋に

ロープで括り付けてバランスを保っています。

木組みは四方からがっちりと組まれている状態でようやく安定するので、

仕口が緩い部分はベルトなどで固定します。

貫を天井クレーンで吊り上げ、

両端を柱のほぞ穴に差し込んで支えます。

ほぞ穴にほぞが差し込まれた部分。

元々は束石の上に柱が乗っているため、柱の高さの調整をします。

足下に薄めの板材を何枚か差し込み、板の枚数を調節して

高さを揃えます。

 

 

同じ要領で柱と貫を組み立てていき、高さを調節していきます。

レーザーで水平を測っています。

四方の柱が建つと、全体に少し安定性が出てきます。

 

次は貫の上に束を置き、更に桁を組んでいきます。

上から見下ろすと、少しづつ元の軸組みが

復元されていくのがわかります。

仮組みは、解体前に打っておいた番付を手がかりに、

図面と部材を確認しながら進めていきます。

図面を確認する大工さんの様子。

ただし実際の木組みは図面よりも複雑なため、

「I2」という記号の打ってある部材だけで何本もあります。

写真に写っている番付は全て「I2」。

このため、解体時の順序や構造をよく覚えていないと

復元は難しいのです。

 

 

 

 

 

 

 

2020/05/17

移築用古材釘抜き・磨き作業

引き続き、移築再生用古民家の作業工程レポートです。

解体して保管している部材は、一つ一つ釘を抜き、

磨いて汚れを落とし、亜麻仁油や古色で仕上げていきます。

まずは小さな部材から、コツコツと作業していきます。

主に金槌、釘抜き、ペンチなどを使い、

古材に刺さっている釘を抜いていきます。

柱に刺さっている釘も、一本一本残っているものがないか探しています。

釘が全て抜けた部材は、ホイルサンダーで磨きます。

ほぞ穴の中は細いブラシで汚れを落とします。

磨き上げた部材。

この後、亜麻仁油で仕上げていきます。

 

 

十字梁や大黒柱など、古民家の主軸となる大きい部材を磨く日は、

設計士さんや撮影の方も来られ、大勢での作業となりました。

写真手前にメインの十字梁や曲がり梁、奥に柱など、

古民家一棟分の古材が積んであります。

全ての部材を磨くのにはおおよそ1ヶ月ほどの期間を要します。

この日は、設計士さんが曲がり梁の磨き作業を体験されました。

ホイルサンダーで磨くと綺麗な杢目が現れ、

手斧はつりの跡もくっきりと浮かび上がってきます。

写真右の磨かれた部分と、左の磨き前の煤だらけ部分で、その差は一目瞭然です。

古材磨きを体験された設計士さんは、

「皮を剥いているような感覚」と仰っていました。

磨いていると、煤が取れて、梁に何かの文字が書いてあるのを発見しました。

古民家は地棟に建てられた時代(年号)が書いてあることが多く、

古材磨きの時に煤が取れ、その文字が読み取れることが多いのですが、

今回はこの曲がり梁に書いてあったのでしょうか。

肉眼で見るとうっすらと墨で文字のようなものが書いてあるのはわかりますが、

内容は読み取れませんでした。

全体を磨き終えると、今度は亜麻仁油で仕上げていきます。

仕上がりはこのような感じ。

この後、設計に応じて古色で仕上げるなど、色味を調節します。

勿論、亜麻仁油仕上げのまま使われることも多くあります。

長さ8m、重量にして700kgある大きな梁を磨いていきます。

磨き作業中は煤埃が粉塵状に舞って、服やマスクの中まで真っ黒に汚れますが、

長い年月で蓄積された汚れが落ちていくことが実感できます。

亜麻仁油仕上げ。

亜麻仁油を塗った部分と塗っていない部分で、木の表情が変わります。

木材が雨に濡れると、色が濃くなり杢目が際立ち、艶が出ますが、

亜麻仁油で仕上げることによって濡れたような美しい状態を保つことができます。

 

写真右が磨き前の梁、左が亜麻仁油仕上げ後の梁です。

重さが700kgある梁は人力ではひっくり返せないため、

下腹面を磨く時はユニックを使って返します。

メインの大きな梁は、全面を仕上げるのに半日近くかかりました。

 

欅の大黒柱はホイルサンダーで全体を磨くのではなく、

汚れている部分だけをスチールウールで手作業で磨いていきます。

スチールウールで磨くと、汚れだけが消しゴムで消しているように落ち、

部材が持っている古色の味わいはそのまま残ります。

おうちの方が住まわれていた時、日常的に磨くことのできた柱材などは、

ホイルサンダーで全体を磨くのではなく、

できる限り経年変化で生まれた美しさをそのまま残します。

亜麻仁油で仕上げます。

磨き作業前の柱と並べると、仕上がった柱の美しさがよくわかります。

仕上がった部材はリフトで倉庫の中に運び入れます。

この後、運び込まれた倉庫で仮組みをし、仕口の調整や使えなくなった部材の

差し替えなど、細かな部分を直していきます。

古民家の一つ一つの材を蘇らせるのは根気の要る作業ですが、

丁寧に扱うことで美しく再生できます。