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現場レポート
2020/05/17

移築用古材釘抜き・磨き作業

引き続き、移築再生用古民家の作業工程レポートです。

解体して保管している部材は、一つ一つ釘を抜き、

磨いて汚れを落とし、亜麻仁油や古色で仕上げていきます。

まずは小さな部材から、コツコツと作業していきます。

主に金槌、釘抜き、ペンチなどを使い、

古材に刺さっている釘を抜いていきます。

柱に刺さっている釘も、一本一本残っているものがないか探しています。

釘が全て抜けた部材は、ホイルサンダーで磨きます。

ほぞ穴の中は細いブラシで汚れを落とします。

磨き上げた部材。

この後、亜麻仁油で仕上げていきます。

 

 

十字梁や大黒柱など、古民家の主軸となる大きい部材を磨く日は、

設計士さんや撮影の方も来られ、大勢での作業となりました。

写真手前にメインの十字梁や曲がり梁、奥に柱など、

古民家一棟分の古材が積んであります。

全ての部材を磨くのにはおおよそ1ヶ月ほどの期間を要します。

この日は、設計士さんが曲がり梁の磨き作業を体験されました。

ホイルサンダーで磨くと綺麗な杢目が現れ、

手斧はつりの跡もくっきりと浮かび上がってきます。

写真右の磨かれた部分と、左の磨き前の煤だらけ部分で、その差は一目瞭然です。

古材磨きを体験された設計士さんは、

「皮を剥いているような感覚」と仰っていました。

磨いていると、煤が取れて、梁に何かの文字が書いてあるのを発見しました。

古民家は地棟に建てられた時代(年号)が書いてあることが多く、

古材磨きの時に煤が取れ、その文字が読み取れることが多いのですが、

今回はこの曲がり梁に書いてあったのでしょうか。

肉眼で見るとうっすらと墨で文字のようなものが書いてあるのはわかりますが、

内容は読み取れませんでした。

全体を磨き終えると、今度は亜麻仁油で仕上げていきます。

仕上がりはこのような感じ。

この後、設計に応じて古色で仕上げるなど、色味を調節します。

勿論、亜麻仁油仕上げのまま使われることも多くあります。

長さ8m、重量にして700kgある大きな梁を磨いていきます。

磨き作業中は煤埃が粉塵状に舞って、服やマスクの中まで真っ黒に汚れますが、

長い年月で蓄積された汚れが落ちていくことが実感できます。

亜麻仁油仕上げ。

亜麻仁油を塗った部分と塗っていない部分で、木の表情が変わります。

木材が雨に濡れると、色が濃くなり杢目が際立ち、艶が出ますが、

亜麻仁油で仕上げることによって濡れたような美しい状態を保つことができます。

 

写真右が磨き前の梁、左が亜麻仁油仕上げ後の梁です。

重さが700kgある梁は人力ではひっくり返せないため、

下腹面を磨く時はユニックを使って返します。

メインの大きな梁は、全面を仕上げるのに半日近くかかりました。

 

欅の大黒柱はホイルサンダーで全体を磨くのではなく、

汚れている部分だけをスチールウールで手作業で磨いていきます。

スチールウールで磨くと、汚れだけが消しゴムで消しているように落ち、

部材が持っている古色の味わいはそのまま残ります。

おうちの方が住まわれていた時、日常的に磨くことのできた柱材などは、

ホイルサンダーで全体を磨くのではなく、

できる限り経年変化で生まれた美しさをそのまま残します。

亜麻仁油で仕上げます。

磨き作業前の柱と並べると、仕上がった柱の美しさがよくわかります。

仕上がった部材はリフトで倉庫の中に運び入れます。

この後、運び込まれた倉庫で仮組みをし、仕口の調整や使えなくなった部材の

差し替えなど、細かな部分を直していきます。

古民家の一つ一つの材を蘇らせるのは根気の要る作業ですが、

丁寧に扱うことで美しく再生できます。

 

 

 

2020/05/03

移築用古民家解体工事⑦軸組み解体

長い時間をかけて8mの十字梁を外したところで、前回のレポートは終了しました。

今度は、メインの十字梁の短い方をレッカーで吊り上げていきます。

仕口が抜けていくところ。

こちらは比較的簡単に外れました。

レッカーで吊り上げてから、敷地内に降ろしていきます。

 

 

段々と材が少なくなり、屋根の構造がすっきりしてきました。

今度は柱を外していきます。まずは柱を支えている筋交いから外します。

柱は梁に比べると重量が軽いものが多く、軽めのものは手作業のみで解体し、

運んでいます。

 

ユニークな形の曲がり梁。

天井裏の見えないところまで遊び心を利かせています。

自然の木の曲線を楽しむ姿勢は、今の画一化された建築では中々見られない、

昔の職人仕事ならではの魅力です。

仕口がどうなっているか確認しています。直線的な梁と違い、

ほぞとほぞ穴の角度などが難しいようです。

まずは真ん中の束を外し、その後梁の両端を同時に外していきます。

向かって左の仕口が外れると、右の仕口もすぐに外れました。

地面に置かれていても、独特の面白みのある梁です。

 

 

こちらの曲がり梁も大変独特の形。

このような曲がり方をする木は、恐らく元々崖のようなところに

生えていたのではないかと推測されます。

こちらも吊り上げて地面に置きます。

 

かなりすっきりしてきました。

しかし後ろから見ると、まだ桁と柱が全面に残っています。

桁材は何箇所かで継いであるので、継手の部分から順番に外していきます。

外したものは一旦地面に置き、いくつかの材が繋がったままのものは

一つ一つの部材にしてから、トラックに積み込みます。

このトラックで、古材の保管場所まで何往復もして運びます。

すべての材を順番に外していき、いよいよ最後には柱と貫が一列分だけ残りました。

これを地面に倒して、一つ一つの部材に外せば、解体終了です。

他の構造材を全て取り払ってしまったため、ほぼ筋交いのみで支えられています。

レッカー紐で貫を支え、筋交いを取っても全体が倒れないようにしています。

貫の部分にロープを括り付け、大工さんが全員でロープを引っ張ります。

レッカーを緩めていくと、筋交いを外した方へ全体が傾くので、

ロープを引っ張って倒れる勢いを殺しています。

材に衝撃を与えないように、ゆっくりゆっくりと倒していきます。

全て倒れたら、繋がっている材を外していきます。

これで全ての解体が終了しました。

後は敷地内を整地するだけです。

何も無くなった光景に少し寂しさを感じますが、ここに建っていた古民家は、

新たな地で蘇ります。

次回からは、解体した古材を磨く作業に入っていきます。