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現場レポート
2021/12/28

2021年最後の仕事

年内最後の仕事は、ベルギーへの古材発送です。

一年かけて集めた床の間の地板15枚と、お寺の雨戸8枚の計23枚を、

美術品の運送業者さんが取りに来てくださいます。

一年かけて集めた主に欅の地板。

(松のジンの部分を使った地板などもあります。)

年代は明治〜昭和初期まで様々です。

すべてに管理番号のシールを貼っています。

当店スタッフが欅の地板を運んでいる様子。

運送業者さんが綺麗に高さ順に並べて積み込んでくださっています。

今回発送分の中でも特に魅力的なのがこちらのお寺で180年ほど使われていた雨戸です。

杉の目が細かく、180年雨風に晒されてきた風格があります。

お花の背景としても。

これらの古材を運送業者さんが綺麗に梱包してコンテナに積み込んで

ベルギーまで海上輸送してくださいます。

これで今年の仕事も無事終わり、来年は滋賀県の中国茶と点心のお店の内装のお仕事から始まりそうです。

来年も頑張りますので島村葭商店をご愛顧のほどどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

2021/12/11

長浜の現場と高月のお茶室

長浜の現場での当店の仕事も漸く最終工程に入りました。

こちらの現場は「長浜で長年使われてきた古材を

もう一度同じ長浜の地で蘇らせ使用する」

というテーマで古材をお使いいただいています。

製材や磨き仕上げを行なっており表面は新材のように見えますが、

実は材自体が非常にサステナブルな意味を持っています。

 

さて、長浜の古い鴨居材を製材して作った松板は、

納品後素晴らしいフローリングになっていました。

こちらが納品前の松板材です。

こちらを現場の大工さんに張っていただき、

このようなフローリング空間に仕上がりました。

古材を無駄にしないよう使える部分は全て使用したので

幅も長さもまちまちの板材でしたが、綺麗に敷き詰めていただきました。

 

また、杉の棚板は浮造り状にするためにホイルサンダーで磨き上げ、

木工作家さんに接ぎ加工をお願いしてから塗装仕上げしました。

古い板材の良い部分だけを使用しているため、非常に目の細かい棚板ができました。

木工作家さんの上手な加工のお陰で、

接いであることがわからず一枚板のようです。

色のつかない保護用の塗料で塗装しています。

柱の周りを四方から囲むかたちで棚板を留めるため、

このような形になっています。

 

この棚板を現場にて設置しました。

ダボとダボ穴にボンドを塗っています。

まずはL字に接ぎ合わせ。

その後柱に四方から囲む形で設置します。

ハンマーで軽く叩いて接ぎ合わせ部分を固定。

さて、ここでPPロープを取り出し、棚板の周りを囲んでいきます。

結束バンドでギューっと力を入れて固定します。

これで四方から圧力がかかり、板同士がしっかり接着されます。

角の部分に木を挟み込み、ロープをさらにきつくします。

接合部のはみ出してしまったボンドを拭き取っています。

接ぎ合わせ部分。

この後、2時間固定したまま放置して接着剤を乾かします。

この工程を3柱分繰り返します。

2時間後、しっかり板同士が固定されたらPPロープを取り、

仕上げに角をペーパーでなめらかにします。

出来上がりです。

こちらは商品棚になるそうです。

 

最初に納品させていただいた欅の赤身腰板も綺麗に貼られており感動しました。

約40㎡の腰板を作るのに、鴨居や柱を何十本も加工し、大変でしたが

仕上がりを見るとやりがいがあったと感じられます。

 

さて、こちらは欅のカウンター板です。

欅の鴨居を厚めに製材し、2枚接ぎの板にしました。

2枚で接いでいますが共木なので杢目が合っています。

現場で設置していただき、このようなカウンターに仕上がりました。

 

これでこちらの現場での当店の仕事は終わりですが、

オープン後、どのような空間が出来上がっているのかとても楽しみです。

 

 

また、同じく長浜市で古材を使用したお茶室を建てられている現場へ

色合わせに行ってきました。

こちらのお茶室は、愛着のある古民家を解体する際に、

部材を残して敷地内にその材を使用した思い出の詰まった空間が欲しい

というご要望で建てられています。

玄関土間の上に飛んでいる十字梁は、

元々同じ古民家内でも別の空間に使われていたため

経年変化の色合いが違っています。

統一感を出すべく古色で合わせていきます。

脚立に乗って古材を古色で仕上げていきます。

このように、元々同じ場所で経年変化してきたかのような

統一感のある十字梁に仕上がりました。

当店の古色仕上げは、「塗装」というよりも

「吹き込んで染め上げる」ような方法で着色しています。

亜麻仁油、弁柄、松煙という自然の塗料を使い、

木材の表面に布で吹き込んで染めていきます。

この方法は「塗る」よりも杢目や古材の表情がしっかりと残り、

木材が本来持っている味を活かすような技法です。

 

今年の仕事も漸く落ち着いてきて、来年に向けて鋭気を養う期間を取れそうです。

長いレポートにお付き合いいただき有り難うございました。

 

 

 

 

 

 

2021/11/27

移築用古民家解体

移築用古民家の軸組解体が終了しましたので

解体の様子をレポートします!

まずは合掌造りからです。

壁や葭や煤竹を取り払ってしまうとそれによって繋がり支えられていた部分が

何かの拍子で崩れてしまうことがありますので

危うい部分は筋交で留めてからの作業になります。

合掌丸太がつし梁から落ちそうになっていた部分があり、

そのまま解体してしまうと危ないので筋交で留め、

構造が崩れてしまうのを防ぎながら慎重に解体していきます。

古民家は部材同士を四方から留めるバランスで建ち上がっているので

少しでもバランスを崩すと一気に倒れてしまう危険性があります。

そのため構造をしっかりと見極めながら、

どこから仕口を外していくべきか判断し、

一つ一つ慎重に外していきます。

バランスが危うい部分は予め筋交で留め、安定性を保っています。

 

手で外した部材を重機で持ち上げている様子。

梁は1本数十キロから数百キロの重さがありますので、

重機で支えながらでないと折れてしまったりします。

下に落ちてしまうとそれこそ大惨事です。

仕口が外れる瞬間の動画がありますのでご覧ください。

上の梁から順番に外していき、今度は端の柱から順番に解体していきます。

大分綺麗になってきました。

最後に鴨居や貫で支えられた2対の柱達と、それを繋ぐ梁が残ってきました。

梁を外し、残った2対の鴨居と貫で繋がった柱達は、

紐で引っ張ってバランスを取りながら人力でゆっくりと地面に倒します。

もう一方も紐で引っ張りながらゆっくりと倒しています。

倒した後に地面の上で仕口を外して部材を解体していけば、

心許ない部材のバランスを気にしなくて済むというわけです。

部材をすべて回収し、後は整地をすれば解体終了です。

 

 

 

 

2021/11/06

祇園、長浜の現場

引き続き、祇園や長浜の現場で使う部材の寸法や仕上がりについて、

設計士さんや工務店さんと打ち合わせを重ねながら進めています。

こちらは祇園のテナントの作り付け什器部分の打ち合わせ。

柱は栗、欄間は千本格子(こちらはイメージ用のもので実際はもっと繊細で幅の長いものを使われる予定です)、欄間廻りは欅の鴨居、ハンガーをかける吊り下げ棒は栗の丸格子を利用。棚板になる板材とその框も栗材です。

設計士さんにご提案するために一度材を組んでみてイメージを作りやすくしています。

欄間は実際にはもっと繊細なものを導入される予定。

栗の柱、欅の廻り縁、栗の吊り下げ棒などの相性を見ています。

棚板になる予定の栗板材。こちらは磨き前です。柱は足元が傷んでいるため、この部分は使いません。

図面の寸法と照らし合わせながら、高さが足りるかなど話し合い、打ち合わせを進めます。

この他、床廻りなどに使う部材もご提案して決めていきました。

 

 

こちらは長浜の現場で使われる予定の杉板材です。

古材の表面にプレナーをかけてから、ホイルサンダーで軽く浮造り状にしています。

写真ではわかりにくいですが、夏目が削れて冬目が浮き立っています。

こういった板を約60枚作り、仕上げに古色塗りをしていきます。

こちらは古色のサンプルです。

設計士さんと仕上げの色を相談するために、4種類作成しました。

右から亜麻仁油のみのもの、薄めの古色のもの、少し濃いめの古色のもの、弁柄を多めに配合し少しのっぺりした仕上がりにしたもの

です。

お店のイメージに合わせて古色の配合を変え、ご提案することが可能です。

 

移築用解体の現場も進んでいます。

屋根の煤竹と葭がすっかり下ろされ、ほぼ軸組だけの状態になりました。

つし梁に乗っている合掌丸太。

下ろした煤竹。

軸組の構造がよくわかります。

これから番付け打ちが始まり、その後解体となります。

 

毎日慌ただしく動いていますが、その都度レポートしていきますので

宜しくお願い致します。

2021/10/14

構造材を板材へ、伊香造り古民家の解体

10月に入り、かねてより打ち合わせを重ねていた祇園、大原、長浜の現場への古材納品が重なり、毎日忙しく過ごさせていただいています。

長浜の現場へは、実に欅の柱50本、松の鴨居30本を製材し、腰板や床板に仕上げて納品するという大きな仕事をいただきました。

その他、杉の板材約70枚を目出し磨きし、棚板を作るなどの作業もあり、当店のスタッフのみでなく大工さんや製材所と連携しながら作業を進めています。

今回は、柱や鴨居を板材に仕上げていく過程をレポートしていきます。

欅の柱を並べています。

①柱や鴨居に刺さった釘を残らず抜く。

一本一本金属探知機でくまなく釘を探し、金槌や釘抜、鑿(のみ)、ペンチなどで掘り出していきます。

②製材所で製材。

製材機にかけてもらい、板状にしていきます。

③木取り

板の割れや虫喰い、ほぞ穴などを全て確認し、使えるものと使えないものを選別した上で、白太を外して赤身の良い部分だけを木取りしていきます。

④大工さんにプレナーと実加工をお願いする。

⑤板材完成。

最初の柱の状態からは想像ができないかと思いますが、こんなに美しく仕上がりました。

こちらは素地の状態で、仕上げに油拭きなどを施すかどうかは設計士さんに確認中です。

まだまだ量が足りないので、①から④の過程を毎日のように進めています。

当店の古材は、長浜の古民家で何百年と使われていたものがほとんどですので、手をかけて形を変えて再び長浜の店舗に入れていただけるのは本当に嬉しい限りで、非常に意味のあることだと思います。

 

 

また、長浜の古民家を一軒移築再生用に解体することとなり、先日はお祓いをしてきました。

長年この家を守ってこられた神様、ご先祖様への感謝を込めて。

神主さんの祝詞では、この古民家を大切に手解体し、次の場所で蘇らせるということを神様に伝えてくださいました。

 

お祓いを終えると早速解体作業開始です。

長浜の昔の農家には、ニウジや十字梁を特徴とする伊香造りと呼ばれるかたちが多いのですが、冬の寒さ対策のために吊り天井が取り付けられたり、生活様式の変遷でニウジが畳敷きに変えられたりして手を加えながら住まわれてきました。

その加えられた部分を取り外し、元の姿が出てくると、本来の古民家の梁や柱の存在感に圧倒させられます。

吊り天井を捲って現れた十字梁。

元々はニウジと呼ばれる土座部分に後から床板を張り、畳を敷いて生活されていました。

 

この後、屋根の葭を下ろし、土壁を落としていくと、いよいよ軸組の手解体が始まります。

次回のレポートもどうぞお楽しみに。