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現場レポート
2020/10/10

京都・嵐山の現場へ納品

ボストンへの古民家移築再生の計画が着々と進む中、

今月半ばからは鎌倉への移築プロジェクトも動き出します。

 

単品部材でも何件かご依頼をいただいており、

本日は京都の嵐山の現場へ2度目の納品です。

前回は丸太の柱や梁などを数点納品しましたが、

今回はカウンター天板用の欅材をメインに、細かなものを

何点か納品します。

前回納品時の積み込み風景。

本日納品する框用欅材。良い色に経年変化しています。

階段周りのささら用松材は、松煙・紅殻・亜麻仁油で煤けたような古色に仕上げました。

框用欅材は製材したものをそのまま納品します。

階段踏板用松材。鴨居を製材し、こちらも古色塗りで深い色に仕上げています。

 

今回のメインはカウンターの天板としてお使いいただく欅材です。

長さ5500mm、高さ440mm、厚みが180mmにもなる立派な

欅の鴨居を半分の厚みに製材し、厚み90mmの板にしました。

製材前の欅材。圧巻の長さ、厚み、重量です。

今回カウンター用に必要なのは4000mmなので、

製材前にチェーンソーでカットします。

残った部分は4枚に挽いて別の部分でお使いいただくことに。

機械にセットし、綺麗に半分に割れるように真ん中のラインを見極めます。

欅は反りやすいため、真ん中のラインを決めるのがとても難しいです。

製材していきます。

 

中身の詰まった赤身の綺麗な製材面でした。

 

階段踏板用の松材も製材しました。

古材は全て一点ものですので、工務店の方、設計士の方、

御施主様に何度も足をお運びいただき、

実物の表情や重量感、質感をご体感の上で決めていただきます。

お問い合わせをお待ちしております。

 

 

 

 

 

2020/08/28

移築用古民家仮組み②

少し更新が滞っていましたが、前回に引き続き

古民家の仮組みレポートです。

古民家の仮組みは、どの部材がどこにあったかを忠実に再現する必要があるため

解体前の図面を何度も確認しながら進めていきます。

図面を見ながら相談する大工さん達の様子。

 

長い桁材が束に嵌っていくいく過程は、とても気持ちがよく見応えがあります。

ほぞ穴の中を掃除しながら上手く嵌る様に調整しています。

 

軒の部分の柱や桁は、細い杉材で軽いため、

床で組んでからクレーンで一気に建ち上げます。

建ち上がってからは四方に支える材がないため、

倉庫に備え付けられている板と繋いで留めます。

 

大体の柱が建ち上がると、今度は梁を乗せていきます。

梁が組まれると、木造建築の軸組が一気に見えてくるようです。

一梁一梁、クレーンで持ち上げて仕口を接合していきます。

多少曲がっている木でも、順応した構造で

自然の曲がりを活かして使用されます。

 

大体の梁が組み上がったところで上から見下ろしてみると、

この古民家の持つ曲がり梁の面白さが一層感じられます。

このような自然の曲線が多用された建築は

現代では中々見られることはないでしょうか。

13mに渡る桁材も圧巻の迫力です。

 

こちらの古民家は二重梁の構造になっており

小屋梁の上に束を立てて、更に梁を乗せます。

よりしっかりとした印象になります。

上から見下ろすとこのような感じです。

 

およそ解体時と同じ、3日半をかけて仮組みが建ち上がりました。

今度は設計士さんと御施主様が実際に仮組みの中で打ち合わせをしながら

どのように生まれ変わらせるかを相談していきます。

 

仮組みはしばらくの間建ったままになっていますので

ご見学を希望される方は下記のメールアドレスもしくは

お電話番号までご連絡ください。

info@sm-kozai.jp

090-4286-7784

 

 

 

 

 

2020/07/04

移築用古民家仮組み①

ボストンへ移築する予定の古民家は、古材磨きの過程が終わり、

仮組みの過程に入りました。

解体から建て方までを担当される工務店さんの工場内で、

一度解体した古民家の軸組みが復元されます。

 

まずは工場内で磨いた古材を梁、桁、柱などの種類に

分ていくことから始まります。

その後、番付、図面や解体時の写真を参考に組み上げていきます。

 

まずは解体の時、一番最後まで残っていた一列の柱と貫を

床で組んでから建ち上げます。

この状態では支えるものがなく、すぐに倒れてしまうため、

解体時は筋交いで支えられていましたが、今回は工場の鉄筋に

ロープで括り付けてバランスを保っています。

木組みは四方からがっちりと組まれている状態でようやく安定するので、

仕口が緩い部分はベルトなどで固定します。

貫を天井クレーンで吊り上げ、

両端を柱のほぞ穴に差し込んで支えます。

ほぞ穴にほぞが差し込まれた部分。

元々は束石の上に柱が乗っているため、柱の高さの調整をします。

足下に薄めの板材を何枚か差し込み、板の枚数を調節して

高さを揃えます。

 

 

同じ要領で柱と貫を組み立てていき、高さを調節していきます。

レーザーで水平を測っています。

四方の柱が建つと、全体に少し安定性が出てきます。

 

次は貫の上に束を置き、更に桁を組んでいきます。

上から見下ろすと、少しづつ元の軸組みが

復元されていくのがわかります。

仮組みは、解体前に打っておいた番付を手がかりに、

図面と部材を確認しながら進めていきます。

図面を確認する大工さんの様子。

ただし実際の木組みは図面よりも複雑なため、

「I2」という記号の打ってある部材だけで何本もあります。

写真に写っている番付は全て「I2」。

このため、解体時の順序や構造をよく覚えていないと

復元は難しいのです。

 

 

 

 

 

 

 

2020/06/14

床框用欅材製材

移築再生用古材の磨き作業も終わり、

次は工場内での仮組みの過程に入っていきます。

さて、島村葭商店は少数の部材からのご注文も承っております。

今回は築250年の古民家から取れた欅の鴨居を製材して

床框としてお使いいただくことになりました。

 

築250年の湖北地方の古民家から取れた欅の鴨居

 

欅材は反りやすいため、仕上がり寸法に比べて

余裕のあるものを選んで製材します。

製材機で挽いていきます。

まずは木の表情を見るために、四方を薄く挽きます。

 

挽いた面の木の表情や節の出方、虫が入っていないかなどを確認します。

こちらは一見良い古材のように見えましたが、挽いてみると

中にガット虫と呼ばれるカミキリムシが穴を開けていました。

ガット虫は欅が苗木の段階から中に入り込み住み着く虫で

外からは中に虫がいることに気が付きません。

製材してみて初めてわかることはたくさんあります。

四方を製材してみて、床框の化粧面にできる綺麗な面を探します。

指定された寸法を綺麗に取るために、何度も製材しましたが

今回の材は全体に虫が開けた穴が点在しており、使えませんでした。

 

急遽、同じ古民家から取れた欅の鴨居をもう一丁製材することに。

こちらの材は中が綺麗であることを祈りつつ、製材機にかけていきます。

まずは一面を薄く挽いてみると、綺麗な杢目が現れました。

一点だけひびがありましたが、虫は入っていなさそうです。

白太の部分も製材で落としつつ、赤身の綺麗な部分だけが

残るようにしていきます。

非常に綺麗な欅の古材です。

この後、ほぞ穴やひびの部分、節が出ている部分などを落とし、

指定された寸法が綺麗に取れるように、数cmから数mm単位で挽いていきます。

mm単位で製材した古材の薄片。

cm単位で落とした古材。

 

今回の材は虫も入っておらず、250年経っていますが

非常に状態も良好でした。

H350×T145×L4400の欅の鴨居から、126角L2800の框材を取るために

何度も何度も製材して木の表情を吟味し、一番綺麗な部分を取り出して

納品します。

元々古材には釘が刺さっていることが多いので、

その釘を探して一本一本抜いていくのにも時間と手間がかかります。

一本の古材を蘇らせるために多くの労力がかかっています。

 

 

 

2020/05/17

移築用古材釘抜き・磨き作業

引き続き、移築再生用古民家の作業工程レポートです。

解体して保管している部材は、一つ一つ釘を抜き、

磨いて汚れを落とし、亜麻仁油や古色で仕上げていきます。

まずは小さな部材から、コツコツと作業していきます。

主に金槌、釘抜き、ペンチなどを使い、

古材に刺さっている釘を抜いていきます。

柱に刺さっている釘も、一本一本残っているものがないか探しています。

釘が全て抜けた部材は、ホイルサンダーで磨きます。

ほぞ穴の中は細いブラシで汚れを落とします。

磨き上げた部材。

この後、亜麻仁油で仕上げていきます。

 

 

十字梁や大黒柱など、古民家の主軸となる大きい部材を磨く日は、

設計士さんや撮影の方も来られ、大勢での作業となりました。

写真手前にメインの十字梁や曲がり梁、奥に柱など、

古民家一棟分の古材が積んであります。

全ての部材を磨くのにはおおよそ1ヶ月ほどの期間を要します。

この日は、設計士さんが曲がり梁の磨き作業を体験されました。

ホイルサンダーで磨くと綺麗な杢目が現れ、

手斧はつりの跡もくっきりと浮かび上がってきます。

写真右の磨かれた部分と、左の磨き前の煤だらけ部分で、その差は一目瞭然です。

古材磨きを体験された設計士さんは、

「皮を剥いているような感覚」と仰っていました。

磨いていると、煤が取れて、梁に何かの文字が書いてあるのを発見しました。

古民家は地棟に建てられた時代(年号)が書いてあることが多く、

古材磨きの時に煤が取れ、その文字が読み取れることが多いのですが、

今回はこの曲がり梁に書いてあったのでしょうか。

肉眼で見るとうっすらと墨で文字のようなものが書いてあるのはわかりますが、

内容は読み取れませんでした。

全体を磨き終えると、今度は亜麻仁油で仕上げていきます。

仕上がりはこのような感じ。

この後、設計に応じて古色で仕上げるなど、色味を調節します。

勿論、亜麻仁油仕上げのまま使われることも多くあります。

長さ8m、重量にして700kgある大きな梁を磨いていきます。

磨き作業中は煤埃が粉塵状に舞って、服やマスクの中まで真っ黒に汚れますが、

長い年月で蓄積された汚れが落ちていくことが実感できます。

亜麻仁油仕上げ。

亜麻仁油を塗った部分と塗っていない部分で、木の表情が変わります。

木材が雨に濡れると、色が濃くなり杢目が際立ち、艶が出ますが、

亜麻仁油で仕上げることによって濡れたような美しい状態を保つことができます。

 

写真右が磨き前の梁、左が亜麻仁油仕上げ後の梁です。

重さが700kgある梁は人力ではひっくり返せないため、

下腹面を磨く時はユニックを使って返します。

メインの大きな梁は、全面を仕上げるのに半日近くかかりました。

 

欅の大黒柱はホイルサンダーで全体を磨くのではなく、

汚れている部分だけをスチールウールで手作業で磨いていきます。

スチールウールで磨くと、汚れだけが消しゴムで消しているように落ち、

部材が持っている古色の味わいはそのまま残ります。

おうちの方が住まわれていた時、日常的に磨くことのできた柱材などは、

ホイルサンダーで全体を磨くのではなく、

できる限り経年変化で生まれた美しさをそのまま残します。

亜麻仁油で仕上げます。

磨き作業前の柱と並べると、仕上がった柱の美しさがよくわかります。

仕上がった部材はリフトで倉庫の中に運び入れます。

この後、運び込まれた倉庫で仮組みをし、仕口の調整や使えなくなった部材の

差し替えなど、細かな部分を直していきます。

古民家の一つ一つの材を蘇らせるのは根気の要る作業ですが、

丁寧に扱うことで美しく再生できます。