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現場レポート
2024/06/25

理念をもう一度見つめ直す

当店が微力ながら関わらせていただいた鎌倉の古民家移築プロジェクトが

先日 The New York Timesの電子版に掲載されました。

 

お施主様、設計士さんの主導により、数百年前の古民家が各地から集められ

長い年月をかけてかけて生まれ変わったその過程が、丁寧に記事にされていました。

日本各地から、あらゆる伝統技術を継承する職人さんたちが集まって

作り上げられた壮大なプロジェクトです。

 

「日本の古いものを保護し、後世に伝えていく」ということと

「海外の生活様式と日本の住文化を融合させ、新しいものを作り上げる」

ということの両方を実現しているこのプロジェクトの素晴らしさが

ひしひしと伝わってくる内容でした。

 

当店も、小さい力ではありますが古民家の紹介や追加古材の提供など

プロジェクトの一員として参加させていただき

お施主様や設計士さんを始め、全国のあらゆる職人さんにたくさんのことを教わる

とても大切な機会を頂戴しました。

 

こうして記事を読んでいても、改めてたくさん学ぶことがあり

今後どういった理念を持って仕事を続けていくかをもう一度考えることができました。

 

現在、滋賀県の北端の古民家を2棟、移築用に解体していますが

その2棟にもたくさんの学びをいただけることと思います。

 

できることは小さいですが、日々コツコツと、捨てられていく良いものを

残し、日本の美意識を紡いでいくための努力を続けて参ります。

 

 

2024/05/04

製材について

皆様GWはいかがお過ごしでしょうか。

島村葭商店では、GWは天気が良く仕事日和ですので

古材の整理をしております。

さて、先日は家具の天板用の欅材を製材しました。

こちらが製材前の古材鴨居です。

今回必要な寸法は約600×5400×T25ほど。

一枚の古材から作ることはとても難しいので

360×2900×T120ほどの鴨居を2本と、予備に1本用意し

綺麗な杢目が出た部分で接ぎ加工して制作します。

製材してみないと中身がどうなっているかわからないので

鋸を入れる時はいつもドキドキで見守ります。

非常に綺麗な赤みの細かい杢目が出てきて感動です。

使用する薄さまで製材します。

この時も白太が出てしまわないかドキドキしています。

製材の醍醐味は、必要寸法を考慮してどこをカットし

どの杢目を活かすかの見極めです。

白太やほぞ穴を避けつつ一番美しい杢目が主役になるように

今ある材料から検討してカットしていきます。

製材した板をこの後木工作家さんに接ぎ加工、

槍鉋風仕上げしていただき

家具の上に乗せる予定です。

 

古材を製材すると経年変化の面を削ることになるため

味わいは減りますが、昔の材は今よりもずっと

ゆっくりと良い環境の中で育っているため

今では中々お目にかかることのできない赤みの美しい杢目が出ます。

 

また、地域で育った木を地域で使い、地域で回収して再生しているので

循環可能なかたちと言えます。

2024/04/02

移築用古民家解体

先日は長浜の雪深い地域で、移築再生するための古民家の解体に先立ち、

お祓いをさせていただきました。

道を隔てて向かい合っている古民家を2棟、移築用に解体します。

外観はかなり古く傷みがきていそうに見えますが、

内部の構造材を見ると、立派な欅の梁や柱が

まだ十分に使える状態で残っていました。

合掌造りの勾配がきつく、高さがあるので、

丈夫な合掌丸太が入っており、長年生活の煙で燻され続けて

良い色合いになっていました。

 

昔の家は親から子へと何世代も受け継がれてきたものですので

解体時はその家のご先祖様に感謝をすることを忘れてはいけません。

 

時代の変遷や家族構成の変化によって増改築はされつつも、

家は家系と深く関わり、代々家族を守ってくれる大事なものでした。

今後新しい場所で蘇るためにも、きちんとお祓いをして

次の縁を繋いでいくことがとても大切なことだと考えています。

2023/12/02

古民家調査

しばらく更新が滞っておりましたが、その間も仕入れから

古材のご提案、加工、移築古民家のご紹介など、

日々コツコツと仕事を進めていました。

 

昨日は福井県まで古民家の調査に行き、

大変古い茅葺の古民家と出会いました。

古民家調査のため北陸へ足を運ぶことは度々あるのですが、

雪の深い地域は瓦屋根に変えている場合が多く

草葺の屋根は中々見つかりませんでした。

そんな中、昨日見た古民家は茅葺屋根が残っており

柱材も煤け具合、ハツリの跡から古さがよくわかるものでした。

こちらの欅の大黒柱は、長年の煤がこびりつき、黒く光って艶ができていました。

恐らく煤けた柱を米糠などで長年磨いてきたのでしょう。

触っても手が汚れることは全く無く、煤は柱の化粧のようになっていました。

以前古井千年家という室町末期築とされる古民家を見学に行った際

柱に煤がついて鉄のように硬質な光を放っていたのを思い出し

この柱からはそれに近いものを感じました。

こちらの栗の柱も、ハツリ跡が古いものであることがわかります。

当店で買付をする古民家は、江戸後期以降のものであることが多いのですが

この民家はそれよりも古く、中々出逢えない江戸中期以前のものであると

推定されます。

こちらの古民家は解体するには勿体無いもので、

活用法を検討していきたいと思います。

 

 

また、先日解体前の民家から古道具などを仕入れに伺ったのは

兵庫県の川西市。

川西は古民家移築の件で過去に何度も訪問していた

島村葭商店にとって思い出深い場所です。

そんな民家から仕入れた一式の中から、面白い品をご紹介します。

こちらは、高級銘木「黒柿」で作られた長火鉢。

天板には黒柿の杢の中でも希少な

「孔雀杢」と呼ばれる美しい杢が出ている部分を使用されています。

目利きの職人さんが木を吟味して作られたことがわかります。

あまり古いものではありませんが、

その分状態がとても良く、不具合なく使っていただけます。

その他にも松のジンの部分を使用した食器棚、

桐の黒箪笥、椅子座で使える欅の大きな長火鉢など

色々なものを仕入れて参りました。

 

その他、古材の納品も頑張っています。

こちらの、太さが一尺以上ある柱や梁は北海道へ、

磨いた合掌丸太20本近くは京都市内へ納品しました

 

また、このような薬箪笥や舟板などもお客様にご紹介しております。

古材のみでなく、古道具などもご紹介可能ですので

在庫状況などお気軽にお問い合わせくださいませ。

 

 

2023/07/19

古材の輸送と心根様訪問

2020年の3月より解体を始めた長浜の移築用古民家が、

漸く海外に向けて出発しました。

こちらで充分に仮組みをして、現地ですぐに組み上がる状態にしているので

構造材、造作材などの木材のみで実にコンテナ6個分の量になったそうです。

これから海を渡り、アメリカに着く頃には夏も終盤に差し掛かっているでしょう。

現地では設計士さん、大工さんが古民家の移築を進めてくださいますが、

当店も古色のタッチアップで現地作業を予定しています。

その際はまたレポートいたします。

 

さて、少し時を遡りますが、先日古材を導入していただいた

高槻の日本料理店「心根」様に伺ってきました。

約5年前にオーナーの片山様と森田建築設計事務所の森田先生にご来店いただいてから

オープン後も中々伺う機会を設けることができなかったため、念願のといった心持ちでした。

茅葺きの古民家を再生された店舗。

掛け軸を飾る床の間には、味わい深い舟板。

框には栗材を使用されています。

こちらは欅の床板に雑木の落とし掛け。

落とし掛けの自然な曲線が美しいです。

入口の丸窓にはしのべ竹の煤竹をご使用いただきました。

その他、レジカウンターなど様々な場所に古材を取り入れてくださっています。

自然の中で育まれた旬の食材のお料理を堪能させていただきました。

蘇った古材の姿を直に楽しめるのは、とても贅沢なことです。