2021/12/11
長浜の現場での当店の仕事も漸く最終工程に入りました。
こちらの現場は「長浜で長年使われてきた古材を
もう一度同じ長浜の地で蘇らせ使用する」
というテーマで古材をお使いいただいています。
製材や磨き仕上げを行なっており表面は新材のように見えますが、
実は材自体が非常にサステナブルな意味を持っています。
さて、長浜の古い鴨居材を製材して作った松板は、
納品後素晴らしいフローリングになっていました。
こちらが納品前の松板材です。
こちらを現場の大工さんに張っていただき、
このようなフローリング空間に仕上がりました。
古材を無駄にしないよう使える部分は全て使用したので
幅も長さもまちまちの板材でしたが、綺麗に敷き詰めていただきました。
また、杉の棚板は浮造り状にするためにホイルサンダーで磨き上げ、
木工作家さんに接ぎ加工をお願いしてから塗装仕上げしました。
古い板材の良い部分だけを使用しているため、非常に目の細かい棚板ができました。
木工作家さんの上手な加工のお陰で、
接いであることがわからず一枚板のようです。
色のつかない保護用の塗料で塗装しています。
柱の周りを四方から囲むかたちで棚板を留めるため、
このような形になっています。
この棚板を現場にて設置しました。
ダボとダボ穴にボンドを塗っています。
まずはL字に接ぎ合わせ。
その後柱に四方から囲む形で設置します。
ハンマーで軽く叩いて接ぎ合わせ部分を固定。
さて、ここでPPロープを取り出し、棚板の周りを囲んでいきます。
結束バンドでギューっと力を入れて固定します。
これで四方から圧力がかかり、板同士がしっかり接着されます。
角の部分に木を挟み込み、ロープをさらにきつくします。
接合部のはみ出してしまったボンドを拭き取っています。
接ぎ合わせ部分。
この後、2時間固定したまま放置して接着剤を乾かします。
この工程を3柱分繰り返します。
2時間後、しっかり板同士が固定されたらPPロープを取り、
仕上げに角をペーパーでなめらかにします。
出来上がりです。
こちらは商品棚になるそうです。
最初に納品させていただいた欅の赤身腰板も綺麗に貼られており感動しました。
約40㎡の腰板を作るのに、鴨居や柱を何十本も加工し、大変でしたが
仕上がりを見るとやりがいがあったと感じられます。
さて、こちらは欅のカウンター板です。
欅の鴨居を厚めに製材し、2枚接ぎの板にしました。
2枚で接いでいますが共木なので杢目が合っています。
現場で設置していただき、このようなカウンターに仕上がりました。
これでこちらの現場での当店の仕事は終わりですが、
オープン後、どのような空間が出来上がっているのかとても楽しみです。
また、同じく長浜市で古材を使用したお茶室を建てられている現場へ
色合わせに行ってきました。
こちらのお茶室は、愛着のある古民家を解体する際に、
部材を残して敷地内にその材を使用した思い出の詰まった空間が欲しい
というご要望で建てられています。
玄関土間の上に飛んでいる十字梁は、
元々同じ古民家内でも別の空間に使われていたため
経年変化の色合いが違っています。
統一感を出すべく古色で合わせていきます。
脚立に乗って古材を古色で仕上げていきます。
このように、元々同じ場所で経年変化してきたかのような
統一感のある十字梁に仕上がりました。
当店の古色仕上げは、「塗装」というよりも
「吹き込んで染め上げる」ような方法で着色しています。
亜麻仁油、弁柄、松煙という自然の塗料を使い、
木材の表面に布で吹き込んで染めていきます。
この方法は「塗る」よりも杢目や古材の表情がしっかりと残り、
木材が本来持っている味を活かすような技法です。
今年の仕事も漸く落ち着いてきて、来年に向けて鋭気を養う期間を取れそうです。
長いレポートにお付き合いいただき有り難うございました。
2021/11/06
引き続き、祇園や長浜の現場で使う部材の寸法や仕上がりについて、
設計士さんや工務店さんと打ち合わせを重ねながら進めています。
こちらは祇園のテナントの作り付け什器部分の打ち合わせ。
柱は栗、欄間は千本格子(こちらはイメージ用のもので実際はもっと繊細で幅の長いものを使われる予定です)、欄間廻りは欅の鴨居、ハンガーをかける吊り下げ棒は栗の丸格子を利用。棚板になる板材とその框も栗材です。
設計士さんにご提案するために一度材を組んでみてイメージを作りやすくしています。
欄間は実際にはもっと繊細なものを導入される予定。
栗の柱、欅の廻り縁、栗の吊り下げ棒などの相性を見ています。
棚板になる予定の栗板材。こちらは磨き前です。柱は足元が傷んでいるため、この部分は使いません。
図面の寸法と照らし合わせながら、高さが足りるかなど話し合い、打ち合わせを進めます。
この他、床廻りなどに使う部材もご提案して決めていきました。
こちらは長浜の現場で使われる予定の杉板材です。
古材の表面にプレナーをかけてから、ホイルサンダーで軽く浮造り状にしています。
写真ではわかりにくいですが、夏目が削れて冬目が浮き立っています。
こういった板を約60枚作り、仕上げに古色塗りをしていきます。
こちらは古色のサンプルです。
設計士さんと仕上げの色を相談するために、4種類作成しました。
右から亜麻仁油のみのもの、薄めの古色のもの、少し濃いめの古色のもの、弁柄を多めに配合し少しのっぺりした仕上がりにしたもの
です。
お店のイメージに合わせて古色の配合を変え、ご提案することが可能です。
移築用解体の現場も進んでいます。
屋根の煤竹と葭がすっかり下ろされ、ほぼ軸組だけの状態になりました。
つし梁に乗っている合掌丸太。
下ろした煤竹。
軸組の構造がよくわかります。
これから番付け打ちが始まり、その後解体となります。
毎日慌ただしく動いていますが、その都度レポートしていきますので
宜しくお願い致します。
2021/10/14
10月に入り、かねてより打ち合わせを重ねていた祇園、大原、長浜の現場への古材納品が重なり、毎日忙しく過ごさせていただいています。
長浜の現場へは、実に欅の柱50本、松の鴨居30本を製材し、腰板や床板に仕上げて納品するという大きな仕事をいただきました。
その他、杉の板材約70枚を目出し磨きし、棚板を作るなどの作業もあり、当店のスタッフのみでなく大工さんや製材所と連携しながら作業を進めています。
今回は、柱や鴨居を板材に仕上げていく過程をレポートしていきます。
欅の柱を並べています。
①柱や鴨居に刺さった釘を残らず抜く。
一本一本金属探知機でくまなく釘を探し、金槌や釘抜、鑿(のみ)、ペンチなどで掘り出していきます。
②製材所で製材。
製材機にかけてもらい、板状にしていきます。
③木取り
板の割れや虫喰い、ほぞ穴などを全て確認し、使えるものと使えないものを選別した上で、白太を外して赤身の良い部分だけを木取りしていきます。
④大工さんにプレナーと実加工をお願いする。
⑤板材完成。
最初の柱の状態からは想像ができないかと思いますが、こんなに美しく仕上がりました。
こちらは素地の状態で、仕上げに油拭きなどを施すかどうかは設計士さんに確認中です。
まだまだ量が足りないので、①から④の過程を毎日のように進めています。
当店の古材は、長浜の古民家で何百年と使われていたものがほとんどですので、手をかけて形を変えて再び長浜の店舗に入れていただけるのは本当に嬉しい限りで、非常に意味のあることだと思います。
また、長浜の古民家を一軒移築再生用に解体することとなり、先日はお祓いをしてきました。
長年この家を守ってこられた神様、ご先祖様への感謝を込めて。
神主さんの祝詞では、この古民家を大切に手解体し、次の場所で蘇らせるということを神様に伝えてくださいました。
お祓いを終えると早速解体作業開始です。
長浜の昔の農家には、ニウジや十字梁を特徴とする伊香造りと呼ばれるかたちが多いのですが、冬の寒さ対策のために吊り天井が取り付けられたり、生活様式の変遷でニウジが畳敷きに変えられたりして手を加えながら住まわれてきました。
その加えられた部分を取り外し、元の姿が出てくると、本来の古民家の梁や柱の存在感に圧倒させられます。
吊り天井を捲って現れた十字梁。
元々はニウジと呼ばれる土座部分に後から床板を張り、畳を敷いて生活されていました。
この後、屋根の葭を下ろし、土壁を落としていくと、いよいよ軸組の手解体が始まります。
次回のレポートもどうぞお楽しみに。
2021/09/18
最近は古建具のご依頼を沢山いただいております。
寸法、建具の種類(ガラス戸、板戸、障子戸など)、
テイストや設置する場所などお客様のご要望を伺いながら
当店の在庫の中から一緒に探していきます。
当然ながらデザインや寸法がご希望にぴったりと合うものを
探すのは難しく、昔の建具は大抵高さが1720〜1750ほどなので
現代の建物に入れるにはほぼ全て高さ調整が必要になります。
こちらは下駄を履かせ、上桟の高さを増やし、上下で
バランス良く高さをお客様のご希望に合わせました。
高さ調節は新材で施されるため、
経年変化した古建具の木材の色とは合いません。
そこで、古色仕上げで全体の色を合わせます。
全体が調和し、綺麗に蘇りました。
こちらのガラス戸も幅、高さの調整を施しています。
上部の空間には、古色塗り後新しいガラスを嵌め込みます。
ガラスは新しいものを嵌め込むこともできますし、
古いガラスをカットして嵌め込むことも可能です。
結晶ガラスやゆらゆらガラスなど、現在では
生産されていない古ガラスの良さを味わいたい方は
古ガラスを嵌め込むことをお勧めします。
古色塗りを施しました。
上部にガラスを嵌め込んで完成です。
今回は2枚の例を挙げましたが、寸法調整や戸車の取り替えなど
古建具を直して使っていただくご依頼が50枚分ほど入っており、
打ち合わせを進めております。
その他動いている現場につきましても、またレポートしていきます。
2021/09/05
前回、京都大原の現場へ栗の柱材を十数本納品しましたが、
こちらの現場へはまだまだ栗の古材が必要です。
希少な栗の柱を探して方々を駆け回り、
ようやく非常に質の良い古材が見つかりました。
滋賀県内の築150年〜200年ほどの蔵に使われていた栗柱材は、
目が詰まっており栗の荒々しさよりも上品な印象を持たせる
味わい深い古材です。
中々見ることのない目の細かい上質な栗材。
設計士さんと共に図面のどの部分に使っていくかを相談し
時間をかけて古材を選定していきます。
4mの長さがある栗の柱材。
自然の木特有の曲がりも魅力の一つです。
大雨の日に雨に濡れながら打ち合わせしました。
さて、古材柱と足固め約15本分の選定を終えると、
次は磨き作業です。
よく磨き上げたのち、ご指定いただいた寸法に製材します。
製材前には必ず釘の確認をし、
古材に刺さった釘を一つ一つ抜いていきますが、
化粧面を傷つけずに釘を抜くのは至難の技です。
センサーで釘を探し出し、化粧面に傷が残らないように
工夫して抜いていきます。
製材所では図面に合わせた寸法に一本一本製材するため、
挽く前に入念に確認を重ねます。
古材は全てが一点もので、代用が利かないため失敗は許されません。
ご指定いただいた厚み95mmの寸法で挽いた古材。
約15本を仕上げるにも中々時間がかかります。
さて、今回は窓の外に付ける欅の格子も納品です。
こちらは磨き前の欅古材。
磨いて古色塗りを施すことで、こんなに美しく仕上がりました。
いよいよ現場に納品です。
納品の日もやはり雨。
トラックから現場へ搬入する途中で少し古材が濡れてしまいましたが、
濡れた栗材もやはり美しいです。
現場に古材を並べて、イメージを確認しています。
今回は御施主様もご一緒に確認してくださいました。
こちらの現場はまだまだ古材を使用してくださるため、
今後もレポートを上げていきますのでどうぞお楽しみに。
他にも沢山の現場からご依頼をいただいております。
こちらの雨戸は祇園のアパレルショップ兼和菓子屋さんの壁面に
板材としてお使いいただく予定です。
雨戸の板は何十年何百年と雨風に晒され、白茶けて杢目が浮き上がり
非常に深い味わいと風格を持っています。
板材も表面を傷つけないよう丁寧に外していきます。
釘の跡が出ないよう綺麗に外した雨戸の板。
また、こちらの雨戸はお寺で約200年使われていたもので、
ベルギーに発送予定です。
非常に目が細かいため、長い年月を経ても
品格が増していくばかりで状態が損なわれません。
こちらは手をかけず、自然が作り出した味わいをそのままに納品します。
来月には湖北地方の古民家を一棟、移築再生用に解体します。
その様子もまたレポートしますのでお楽しみに。