2021/11/06
引き続き、祇園や長浜の現場で使う部材の寸法や仕上がりについて、
設計士さんや工務店さんと打ち合わせを重ねながら進めています。
こちらは祇園のテナントの作り付け什器部分の打ち合わせ。
柱は栗、欄間は千本格子(こちらはイメージ用のもので実際はもっと繊細で幅の長いものを使われる予定です)、欄間廻りは欅の鴨居、ハンガーをかける吊り下げ棒は栗の丸格子を利用。棚板になる板材とその框も栗材です。
設計士さんにご提案するために一度材を組んでみてイメージを作りやすくしています。
欄間は実際にはもっと繊細なものを導入される予定。
栗の柱、欅の廻り縁、栗の吊り下げ棒などの相性を見ています。
棚板になる予定の栗板材。こちらは磨き前です。柱は足元が傷んでいるため、この部分は使いません。
図面の寸法と照らし合わせながら、高さが足りるかなど話し合い、打ち合わせを進めます。
この他、床廻りなどに使う部材もご提案して決めていきました。
こちらは長浜の現場で使われる予定の杉板材です。
古材の表面にプレナーをかけてから、ホイルサンダーで軽く浮造り状にしています。
写真ではわかりにくいですが、夏目が削れて冬目が浮き立っています。
こういった板を約60枚作り、仕上げに古色塗りをしていきます。
こちらは古色のサンプルです。
設計士さんと仕上げの色を相談するために、4種類作成しました。
右から亜麻仁油のみのもの、薄めの古色のもの、少し濃いめの古色のもの、弁柄を多めに配合し少しのっぺりした仕上がりにしたもの
です。
お店のイメージに合わせて古色の配合を変え、ご提案することが可能です。
移築用解体の現場も進んでいます。
屋根の煤竹と葭がすっかり下ろされ、ほぼ軸組だけの状態になりました。
つし梁に乗っている合掌丸太。
下ろした煤竹。
軸組の構造がよくわかります。
これから番付け打ちが始まり、その後解体となります。
毎日慌ただしく動いていますが、その都度レポートしていきますので
宜しくお願い致します。
2021/10/14
10月に入り、かねてより打ち合わせを重ねていた祇園、大原、長浜の現場への古材納品が重なり、毎日忙しく過ごさせていただいています。
長浜の現場へは、実に欅の柱50本、松の鴨居30本を製材し、腰板や床板に仕上げて納品するという大きな仕事をいただきました。
その他、杉の板材約70枚を目出し磨きし、棚板を作るなどの作業もあり、当店のスタッフのみでなく大工さんや製材所と連携しながら作業を進めています。
今回は、柱や鴨居を板材に仕上げていく過程をレポートしていきます。
欅の柱を並べています。
①柱や鴨居に刺さった釘を残らず抜く。
一本一本金属探知機でくまなく釘を探し、金槌や釘抜、鑿(のみ)、ペンチなどで掘り出していきます。
②製材所で製材。
製材機にかけてもらい、板状にしていきます。
③木取り
板の割れや虫喰い、ほぞ穴などを全て確認し、使えるものと使えないものを選別した上で、白太を外して赤身の良い部分だけを木取りしていきます。
④大工さんにプレナーと実加工をお願いする。
⑤板材完成。
最初の柱の状態からは想像ができないかと思いますが、こんなに美しく仕上がりました。
こちらは素地の状態で、仕上げに油拭きなどを施すかどうかは設計士さんに確認中です。
まだまだ量が足りないので、①から④の過程を毎日のように進めています。
当店の古材は、長浜の古民家で何百年と使われていたものがほとんどですので、手をかけて形を変えて再び長浜の店舗に入れていただけるのは本当に嬉しい限りで、非常に意味のあることだと思います。
また、長浜の古民家を一軒移築再生用に解体することとなり、先日はお祓いをしてきました。
長年この家を守ってこられた神様、ご先祖様への感謝を込めて。
神主さんの祝詞では、この古民家を大切に手解体し、次の場所で蘇らせるということを神様に伝えてくださいました。
お祓いを終えると早速解体作業開始です。
長浜の昔の農家には、ニウジや十字梁を特徴とする伊香造りと呼ばれるかたちが多いのですが、冬の寒さ対策のために吊り天井が取り付けられたり、生活様式の変遷でニウジが畳敷きに変えられたりして手を加えながら住まわれてきました。
その加えられた部分を取り外し、元の姿が出てくると、本来の古民家の梁や柱の存在感に圧倒させられます。
吊り天井を捲って現れた十字梁。
元々はニウジと呼ばれる土座部分に後から床板を張り、畳を敷いて生活されていました。
この後、屋根の葭を下ろし、土壁を落としていくと、いよいよ軸組の手解体が始まります。
次回のレポートもどうぞお楽しみに。
2021/09/18
最近は古建具のご依頼を沢山いただいております。
寸法、建具の種類(ガラス戸、板戸、障子戸など)、
テイストや設置する場所などお客様のご要望を伺いながら
当店の在庫の中から一緒に探していきます。
当然ながらデザインや寸法がご希望にぴったりと合うものを
探すのは難しく、昔の建具は大抵高さが1720〜1750ほどなので
現代の建物に入れるにはほぼ全て高さ調整が必要になります。
こちらは下駄を履かせ、上桟の高さを増やし、上下で
バランス良く高さをお客様のご希望に合わせました。
高さ調節は新材で施されるため、
経年変化した古建具の木材の色とは合いません。
そこで、古色仕上げで全体の色を合わせます。
全体が調和し、綺麗に蘇りました。
こちらのガラス戸も幅、高さの調整を施しています。
上部の空間には、古色塗り後新しいガラスを嵌め込みます。
ガラスは新しいものを嵌め込むこともできますし、
古いガラスをカットして嵌め込むことも可能です。
結晶ガラスやゆらゆらガラスなど、現在では
生産されていない古ガラスの良さを味わいたい方は
古ガラスを嵌め込むことをお勧めします。
古色塗りを施しました。
上部にガラスを嵌め込んで完成です。
今回は2枚の例を挙げましたが、寸法調整や戸車の取り替えなど
古建具を直して使っていただくご依頼が50枚分ほど入っており、
打ち合わせを進めております。
その他動いている現場につきましても、またレポートしていきます。
2021/09/08
昨日は、高島市内の300年ほど歴史のあるお寺の鐘楼一式を納品しました。
こちらは移築再生用に綺麗に解体して当店で保管していたもので、
斗や肘木などの細かい部材から、
釣鐘や角に使われていた古い瓦まで、
綺麗に復元できるように部材を残していました。
こちらは個人邸の月見堂として蘇るそうで、とても楽しみです。
納品のためにトラックに部材を積み込んでいる風景。
部材が多いので積み込みだけでも大仕事です。
2021/09/05
前回、京都大原の現場へ栗の柱材を十数本納品しましたが、
こちらの現場へはまだまだ栗の古材が必要です。
希少な栗の柱を探して方々を駆け回り、
ようやく非常に質の良い古材が見つかりました。
滋賀県内の築150年〜200年ほどの蔵に使われていた栗柱材は、
目が詰まっており栗の荒々しさよりも上品な印象を持たせる
味わい深い古材です。
中々見ることのない目の細かい上質な栗材。
設計士さんと共に図面のどの部分に使っていくかを相談し
時間をかけて古材を選定していきます。
4mの長さがある栗の柱材。
自然の木特有の曲がりも魅力の一つです。
大雨の日に雨に濡れながら打ち合わせしました。
さて、古材柱と足固め約15本分の選定を終えると、
次は磨き作業です。
よく磨き上げたのち、ご指定いただいた寸法に製材します。
製材前には必ず釘の確認をし、
古材に刺さった釘を一つ一つ抜いていきますが、
化粧面を傷つけずに釘を抜くのは至難の技です。
センサーで釘を探し出し、化粧面に傷が残らないように
工夫して抜いていきます。
製材所では図面に合わせた寸法に一本一本製材するため、
挽く前に入念に確認を重ねます。
古材は全てが一点もので、代用が利かないため失敗は許されません。
ご指定いただいた厚み95mmの寸法で挽いた古材。
約15本を仕上げるにも中々時間がかかります。
さて、今回は窓の外に付ける欅の格子も納品です。
こちらは磨き前の欅古材。
磨いて古色塗りを施すことで、こんなに美しく仕上がりました。
いよいよ現場に納品です。
納品の日もやはり雨。
トラックから現場へ搬入する途中で少し古材が濡れてしまいましたが、
濡れた栗材もやはり美しいです。
現場に古材を並べて、イメージを確認しています。
今回は御施主様もご一緒に確認してくださいました。
こちらの現場はまだまだ古材を使用してくださるため、
今後もレポートを上げていきますのでどうぞお楽しみに。
他にも沢山の現場からご依頼をいただいております。
こちらの雨戸は祇園のアパレルショップ兼和菓子屋さんの壁面に
板材としてお使いいただく予定です。
雨戸の板は何十年何百年と雨風に晒され、白茶けて杢目が浮き上がり
非常に深い味わいと風格を持っています。
板材も表面を傷つけないよう丁寧に外していきます。
釘の跡が出ないよう綺麗に外した雨戸の板。
また、こちらの雨戸はお寺で約200年使われていたもので、
ベルギーに発送予定です。
非常に目が細かいため、長い年月を経ても
品格が増していくばかりで状態が損なわれません。
こちらは手をかけず、自然が作り出した味わいをそのままに納品します。
来月には湖北地方の古民家を一棟、移築再生用に解体します。
その様子もまたレポートしますのでお楽しみに。